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林 郁

代表取締役 兼
社長執行役員グループCEO

CEO Comment Vol.76 『2022.3月期決算サマリー[IFRS](連結)』

〜連結税引前利益は、前期比3.2倍の454億円と過去最高益を更新〜

 本日の取締役会の承認を受けて、2022年3月期決算短信[IFRS]を発表いたしました。

Ⅰ. 2022.3月期 決算サマリー

 2022.3月期連結経営成績については、収益72,955百万円(前期比80.2%増)、税引前利益45,393百万円(同3.2倍)と、昨年度に続き、大幅に過去最高益を更新いたしました。フィナンシャルテクノロジー(以下、FT)事業の決済取扱高が引き続き好調に拡大したことに加え、インキュベーションテクノロジー(以下、IT)事業は、全クォーターを通じ堅調に推移しました。なかでも、2Q、4Q共に100億円を超える税前利益を実現しました。営業投資有価証券残高(投資先公正価値)は、前期末の47,170百万円から77,950百万円と、前期末比1.7倍(同30,780百万円)に増加しました。マーケティングテクノロジー(以下、MT)事業は、主力のデジタルプロモーション事業が、クレジットカード等金融関連を中心に堅調に伸長しました。ロングタームインキュベーション(以下、LTI)事業では、(株)カカクコムの業績が回復基調となりましたが、(株)アカデミー・デュ・ヴァン株式ののれん減損等もあり、減益となりました。

以下、セグメントレビューとなります。

<FT>フィナンシャルテクノロジー事業

〜FTセグメントの決済取扱高は前期比18%増と好調に伸長〜
 2022.3月期のFT事業の収益は、10,762百万円(前期比11.3%増)、税引前利益4,548百万円(同10.5%増)と、過去最高益を達成いたしました。主力の決済事業の収益が前期比13%増と好調に推移し、システム安定稼働と拡充のための開発投資等による固定費増を吸収した結果によるものです。また、4Q(1月-3月)税引前四半期利益は、前年同期比21%増と高成長を実現しました。
 決済取扱高は、3兆5,978億円(前期比18%増)、決済取扱件数は、7億2,254万件(同10%増)と、二桁成長が続いております。EC決済取扱高は、3兆3,223億円(同15%増)、注力中の対面決済取扱高は、国内QRコード決済が大幅に拡大し、2,755億円(同65%増)となりました。業種別では、主力の交通・旅行系の回復に加え、外食、公金関連が伸長しました。以上のような成長が続く中で、家電・家具等は、半導体不足やコロナ特需の反動により前期比13%減少しました。

<MT>マーケティングテクノロジー事業

〜MTセグメントは金融関連のデジタルアド取扱高が11%増と順調に伸長〜
 2022.3月期のMT事業の収益は、13,031百万円(前期比0.1%減)、税引前利益は、883百万円(同20.2%増)となりました。主力のデジタルアド取扱高は、302億円(同4%増)、特に当社主力のFT連動領域であるクレジットカード等金融関連の取扱高は、177億円(同11%増)と、順調に伸長しました。並行して、事業環境の変化にあわせたデジタルアド事業において注力業種の見直しをしたことで、収益は横ばいとなりました。また次世代事業として、データを利活用した新規DXリカーリング事業開発の先行投資を吸収し、増益を確保しました。

<IT>インキュベーションテクノロジー事業

〜1年間を通じてグローバル投資戦略が奏功し、投資先公正価値の大幅伸長を実現〜

 2022.3月期のIT事業の収益は、32,787百万円(前期比2.9倍)、税引前利益は、31,215百万円(同3.0倍)となりました。四半期税引前利益は、1Qは3,636百万円(前年同期比51倍)、米国Blockstream社の2.1億ドルの大型資金調達があった2Qは11,886百万円(同2.4倍)、3Qは4,593百万円(同2.5倍)、そして4Qは11,100百万円(同3.3倍)と、1年間を通じて、投資先公正価値の大幅増加を実現しました。営業投資有価証券残高は、779億円に拡大しております。

以下のスライドをご覧ください。

 継続した投資戦略としてコロナ禍や地政学的なリスクでの変化を熟考し1) 市場成長著しいアジア(インド他)、2) 日本(DGリカーリングビジネスの連携)、3) 北米・欧州(次世代フィンテックの勃興エリア)の3エリアを重点エリアとします。また、単なるグローバル投資に留まらず、当社のFTセグメントをプラットフォームとし、決済やデータと連携可能な国内外のFintech事業社と戦略提携した、両利きの投資戦略を継続していきます。
 すでに投資している重点3エリアのパイプラインは非常に充実し、世界的なDXの流れやweb3の潮流に、より一層加速してきているFintech事業者なども加わり、重層的な次世代ポートフォリオを形成してきているように感じます。

<LTI>ロングタームインキュベーション事業

〜カカクコムはコロナ影響から回復基調〜
 2022.3月期のLTI事業の収益は、4,567百万円(前期比23.0%減)、税引前利益は、1,380百万円(同48.0%減)となりました。持分法適用会社である(株)カカクコムが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から回復基調にあります。(カカクコムの決算報告をご覧ください)
 また、当セグメントでは、前年度に、米国子会社であったNew Context Services, Inc.の事業譲渡による売上減少や、今年度、連結子会社である(株)アカデミー・デュ・ヴァン株式ののれん減損を実施したこと等により、減収減益となりました。一方で当セグメントでは、暗号資産事業領域やデジタルヘルス領域など、中長期で次世代日本のDXの台風の目となりそうな事業も走り出しました。

Ⅱ. グループ戦略【DG FinTech Shift】を加速する新年度からの経営戦略骨子

〜次なる3カ年の成長にむけ、「Beyond 1000」をスタート〜
 DGグループの事業規模は約1,000名、グループ会社のカカクコムも同じようなサイズの企業として順調に成長してきています。また、プライム市場への移行やグローバル投資の変化、グローバル企業としての経営のダイバーシティ、ESGの取り組みなど、公開企業として対応していかなければならない課題も時代の要請によって変化してきています。同時に、テクノロジーの進化もweb3という大きなうねりが様々なものを変化させていく予兆を感じます。

 こうした事業環境の変化や企業の成長にあわせ、株主・パートナー・行政という外部のステークホルダーや、会社・従業員という内部のステークホルダーのアライメントを取れる経営形態の必要性も感じてきています。そのため、創業の精神を忘れず、次なる3カ年の成長に向けた新たなスローガン「Beyond 1000」を設定しました。グループ戦略【DG FinTech Shift】を軸に、PSPとして日本有数の大きさにまで成長してきたFTをベースに、データドリブンな取り組みをしながら、個別セグメントとしても成長し、DGグループ全体としても共振するようなグループ経営へと進化していこうというスローガンです。

 また、新年度の経営コンセプトは、【I】両利きの経営/Ambidexterity【Ⅱ】New Architect Designの2軸として走りはじめました。具体的に【I】両利きの経営/Ambidexterityでは、「守り、既存事業の深堀」という右腕と、「攻め、新規事業の創造」という左腕で、大企業では共存が難しくなる両利きの経営を、初心を忘れずにファーストペンギンスピリットをもって推進していきます。【Ⅱ】New Architect Designでは、創業以来、Web1.0、Web2.0、そして、web3というインターネットの発展にDGと共に駆け抜けてきた共同創業者 取締役 兼 専務執行役員Chief Architectの伊藤穰一が中心となって、web3やオープンソース時代を視野に入れた次世代デジタルアーキテクトを設計し、これからのグローバル社会に貢献していきます。

 また、【Ⅱ】のNew Architect Designの情報発信やネットワーキングを目的として、伊藤穰一をナビゲーターとして、以下の取り組みを加速しています。

 『Joi Ito’s Podcast – 変革への道』では、web3、NFTなどを取り上げ、国内外から予想以上の熱狂的な反響を得ています。また、web3やNFTなど、これからの社会を変革する最新テクノロジーを深掘りするテレビ番組「Earthshot 世界を変えるテクノロジー」をBSテレ東で放送を開始しています。

 加えて、6月には『テクノロジーが予測する未来』を上梓します。web3、メタバース、そしてNFTなどの最先端テクノロジーが、私たちの社会、経済、個人の在り方にもたらす変革についての、ビジョナリーなweb3のバイブルともいえる本に仕上がっています。

 さらに、6月14日(火)に、2005年から主催する、国内外の最新テクノロジー動向をテーマとした『THE NEW CONTEXT CONFERENCE』を開催します。今回は、「web3 Summer Gathering ~未来からのテクノロジーの波をサーフしろ~」をテーマに掲げます。世界各国で 150 以上のメタバースやNFTに関する企業やプロジェクトなどに投資を実行しているAnimoca Brands 共同創業者 兼 CEOのYat Siu氏をはじめとするweb3業界の有識者と、web3が実現する分散型社会の未来とテクノロジーについて考えます。

 最後になりますが、長引くコロナ禍に加え、地政学的リスクで先を見通しにくい不透明な社会情勢の中でも、「持続可能な社会に向けた『新しいコンテクスト』をデザインし、テクノロジーで社会実装する」という企業パーパスを忘れず、これからもグローバル社会に貢献していきたいと思います。

 株主を含むステークホルダーの皆様におかれましては、より一層のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。


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