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【DG×りそな 提携の軌跡 #04】CVC編:スタートアップに資金・アセットを積極投資。日本をもう一度、経済大国へ

デジタルガレージとりそなホールディングスは2022年、決済事業の強化・シェア拡大と次世代Fintech事業の推進を目的に、資本業務提携を締結した。翌年には提携を強化し、新たにスタートアップ投資を通じたオープンイノベーション事業でも協業を始めている。提携によって、両社はどのように自社の強みを生かし、新しい未来をつくろうとしているのか。全4回の連載でお届けする。

第4回目のテーマは「CVC」。デジタルガレージは2024年4月、総額130億円のCVCファンド(※)「DGりそなベンチャーズ1号投資事業有限責任組合」(以下、DGRV)を共同で設立し、スタートアップ投資を始めた。CVCファンド設立の狙い、スタートアップ投資戦略、今後の展望について、両グループの事業責任者と投資担当者に話を聞いた。

※コーポレート・ベンチャー・キャピタルファンドの略。事業会社が自己資金で組成し、主にベンチャー企業に出資や支援をおこなう組織のこと


<Speakers>
株式会社りそなホールディングス 執行役 川邉 秀文
りそなイノベーションパートナーズ株式会社 代表取締役社長 原田 雄史
株式会社デジタルガレージ 上席執行役員 中島 淳一
株式会社DGベンチャーズ シニアディレクター 石井 渡

(所属・肩書は公開時点)


スタートアップとのオープンイノベーションで、未知の領域を開拓

CVC設立の目的は、スタートアップが保有する先進的な技術・事業モデルの活用による、両グループの事業成長にある。デジタルガレージとりそなホールディングスの両グループにとっては、まさに今、自グループのアセットを越えた挑戦が必要だった。

川邉:銀行は、銀行法をはじめとする多くの規制のなかでの運営が求められます。その影響もあり、りそなホールディングスではこれまで、自前でのサービスづくりが基本でした。しかし、10年ほど前からは規制緩和により、外部企業との連携や、まったく新しい領域での事業づくりがしやすくなってきました。加えて、一般事業者が金融サービスを始めるといった、外部プレーヤーの参入も増えている状況でした。りそなホールディングスとしては、変わらずお客さまから支持され続けるために、新規事業づくりへと注力するようになりました。

とはいえ、自社グループだけでの新規事業立ち上げには限界があります。そこで注目したのが、まったく新しい発想や技術をもつスタートアップとのオープンイノベーションでした。単に財務的なリターンを狙うのではなく、りそなホールディングスとのシナジーを狙って投資活動をおこなうことで、自社グループのビジネス領域の拡大や、既存事業の非連続な成長を実現できればと考えたのです。

中島:デジタルガレージグループとしても、数年前からグループ戦略として「DG FinTech Shift」を掲げ、決済とデータ、テクノロジーを融合した新規事業づくりに注力していました。そのようななか、りそなさまと提携の機会をいただき、我々と同じくフィンテック領域への事業拡大を目指していると知ったのです。同じ方向へと進むパートナーとして、Win-Winの関係が築けると思い、共同でのCVC設立に至りました。

デジタルガレージとりそなさまとでは、できることがまったく違います。デジタルガレージはデジタル領域での事業開発に強みがあり、それに加えてスタートアップ投資の経験も豊富です。一方、りそなさまは膨大な顧客基盤を保有しており、そのうえで長年にわたって幅広い金融サービスを展開されています。バリューアップ一つとっても、デジタルガレージだけでは実現できない支援が可能だと考えています。

川邉:我々りそなホールディングスとしては、決済事業を中核としたフィンテックビジネスを模索するなか、同領域で先行するデジタルガレージグループさまの知見は重要でした。また、りそなホールディングスは、グループ会社によるVCの経験はあるものの、CVCの経験はありませんでした。その点、デジタルガレージグループさまはCVCの経験も豊富で、一緒にスタートアップと新しいビジネスをつくるパートナーとして、最適だと考えました。

未来を見据え、フィンテック以外の事業にも積極的に投資

2024年2月に設立されたCVCファンドのDGRV。その具体的な投資戦略について、現場で投資に携わる2人に聞いた。

原田:まず重要なのは、財務リターンだけでなく、戦略的なリターンを得るための投資先選定です。デジタルガレージグループさまが得意とする決済やIT分野と、我々りそなホールディングスの強みである金融分野が重なる、フィンテック領域の事業者が、コアな投資対象だと考えています。既存事業のさらなる拡大につながるアイデアや技術をもつスタートアップに、積極的に投資する予定です。

ただし、我々は既存事業の拡大だけでなく、ゼロイチで新しいサービスを生み出すことも視野に入れています。近接領域に閉じず、フィンテックからは外れる事業への投資も積極的に実行したいです。我々がもつ顧客基盤や金融データをベースに、まったく新しい価値提供のかたちが創出できればと思っています。

石井:たとえば最近は、フィンテック領域ではないものの、若年層にリーチできるサービスを展開するスタートアップへの投資を決定しました。社会的に高齢化が進む日本において、いかにして若年層へとアプローチするかは両グループ共通の課題であり、その答えの一つになればと投資に踏み切ったのです。現状のアセットにとらわれず、将来を見据えたあらゆる可能性への投資を検討するつもりです。

現在CVCの数は増加しており、2023年時点で140以上が存在し、事業法人も含めた年間投資総額は5,000億に迫っています(参照元:JAPAN CVC Report2024)。投資を受けたいスタートアップにとって選択肢が多いなか、我々から母数を絞るのは得策ではありません。視野狭窄で特定の分野しか見ないのではなく、さまざまなスタートアップと接点をもち、あらゆる連携の可能性を探りたいです。

幅広く事業展開する2グループの豊富なアセットを提供できる強み

投資を受けるスタートアップからすると、DGRVは他のCVCと何が違うのか。りそなホールディングスとデジタルガレージ、両グループの幅広いアセットを事業成長に活用できることが、大きな特徴だ。

石井:たとえば、電気系企業が設立するCVCが電気関連のスタートアップとしか接点をもたないように、一般的なCVCの場合、投資対象を特定の業界に絞ります。しかしDGRVの場合、幅広く事業を展開している2グループが共同で運営するからこそ、カバーできる範囲が非常に広いのです。

原田:我々が支援するスタートアップは、両グループの顧客基盤や蓄積データなどを活用できる可能性もあります。スタートアップの成長戦略に沿う形で、両グループのさまざまなアセットを活用していただき、更に成長スピードが加速するような有益な支援を提供していきたいと考えております。

石井:いろいろなスタートアップと話をするなかで「DGRVは『りそな』か『デジタルガレージ』か?」と聞かれることもあります。我々はどちらか一方ではなく、両方の性質を合わせもつファンドであると考えており、支援先には、両方のアセットを惜しみなく投入しています。

中島:自社グループだけでなく、幅広い企業とのつながりを提供できるところも、DGRVの強みの一つです。その背景には、デジタルガレージグループとして創業以来スタートアップから大企業に至るまで国内外の幅広いつながりを構築してきたという点があります。たとえば、支援先のスタートアップが次のラウンドに向けてさらなる資金調達を検討する場合、我々がもつ幅広いネットワークから、ふさわしい投資家をご紹介することも可能です。DGRVは、いわば膨大なネットワークの集積地でもあり、我々以外の企業とつながりをもてる場所でもあるのです。

スタートアップへの強力な支援で、他国に勝る経済成長をもう一度

最後に、りそなホールディングスとデジタルガレージグループそれぞれに、DGRVでの投資活動を通して実現したい未来について聞いた。

川邉:ビル・ゲイツは90年代に『銀行機能は必要だが、今ある銀行は必要なくなる』と言ったそうです。まさに今その通りの世界になりつつあります。預金を集め、信用創造を通じて貸し付けや決済をおこなう、という金融の仕組み自体は昔からほとんど変わっていません。しかし、デジタル技術の発展にともない、圧倒的なスピードとスケールが実現できるようになり、事業環境が大きく変化しました。

我々りそなホールディングスは、店頭でのリアルの接点を重視しつつ、デジタル上の金融機能が必要とされる場所に立ち続けることが重要だと考えています。DGRVの設立は我々にとって大きなチャンスです。スタートアップと手を組み、金融機能が組み込まれた新サービスを開発することで、今よりも価値提供範囲が広がります。

また、りそなグループは地域に根差している金融グループでもあり、地域での事業創出と相性がいいです。地域単位での連携を強めることで、東京や大阪だけでなく、全国規模で新しいビジネスを育成できるような未来を目指せればと考えています。

最終的なゴールは、日本経済の活性化です。広大なお客さま基盤や店舗ネットワークをもつ、りそなグループがスタートアップの成長を支援することで、欧米と比べて新陳代謝が進みにくい日本の経済環境にポジティブな影響を与えられればと思っています。

中島:デジタルガレージグループとしては引き続き、コアである決済事業をさらに多くのお客さまに届けつつ、変化する社会のニーズに対応した新しいビジネスの創出を目指します。そのために、社内リソースだけで開発や営業をおこなうのではなく、スタートアップとの提携を通じ、最先端のテクノロジーや自社グループにはない新しい発想を学ばせていただくつもりです。

最終的には、日本経済がかつての勢いを取り戻すことに、貢献できればと思っています。今私は50歳近いですが、若いときの日本の経済は花盛りでした。しかし、どこかのタイミングでテクノロジーの波に少しだけ乗り遅れ、他国と比べて緩やかな経済成長に甘んじることになりました。その結果、アメリカのユニコーン企業が700社超なのに対し、日本はわずか14社(2024年2月時点)と大きく差を付けられています。

しかし私は、まだ追いつけると思っています。負けてたまるかという気持ちも強いです。もう一度日本にかつての勢いを取り戻させるためにも、デジタルガレージグループが大手銀行グループと一緒にスタートアップの支援をすることは大きな意味をもちます。たった30年で変わったパワーバランスは、まだ巻き戻せるはずです。その鍵はスタートアップにあると信じていますので、りそなさまと一緒に、日本経済を活性化するダイナミックな挑戦を仕掛けていきたいです。

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