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海外で「アプリ外決済」を成功させるには 3つの壁とその突破口

2025年12月の「スマホソフトウェア競争促進法」(通称:スマホ法 / スマホ新法)の施行を前に国内アプリ開発事業者の「アプリ外決済」導入が進むなか、海外にもそのしくみを拡大しようとする動きが広がっている。海外ユーザーへのアプリ外決済の導入は収益を大きく拡大できる可能性がある一方、国・地域ごとに異なる法令や納税対応など、いまだ多くの障壁がある状況だ。

アプリ外決済の海外展開のためにクリアすべき課題とは。9月に開かれた東京ゲームショウ2025のTGSフォーラム「海外向けアプリ外課金決済による、グローバル収益拡大」では、アプリ外決済の海外展開に取り組むデジタルガレージ執行役員の崎島淳一氏がCoda CCO(最高営業責任者)のZac Liew氏とともに登壇し、グローバルな展望について語った。


<Speaker>
株式会社デジタルガレージ 執行役員
戦略事業経営企画 担当 / アプリビジネス推進本部長 崎島 淳一

三井物産株式会社において東京、ニューヨーク、ロンドンを拠点にスタートアップ投資や事業開発業務などに従事。その後、株式会社ファーストリテイリングにおいてグローバルのサプライチェーン改革を主導。2022年に株式会社デジタルガレージに参画。執行役員として新規戦略事業を担当、アプリペイ事業などを立ち上げ。

Coda Payments Pte. Ltd.
Chief Commercial Officer(CCO)
Zac Liew

CodaのCCOとしてデジタルコマース領域におけるグローバルな成長とパートナーシップを牽引。ロサンゼルスからバンコクまで広がる営業・パートナーシップチームを統括し、適切な決済手段と市場参入ルートを通じて、パブリッシャーやブランドのスケール拡大を推進。Codaに加わる以前は、マレーシアの決済企業Curlecを共同創業し、同社を率いてRazorpayへバイアウト。

(所属・肩書は公開時点)


国内ゲーム市場の成熟と、広がる海外進出の可能性

2025年12月18日に施行予定のスマホ法はモバイルOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジンの4つのソフトウェアに関する新しいルールを設定するものだ。AppleやGoogleといった巨大プラットフォームを通さずに決済ができるようになる(アプリ外決済)ことで、決済手段の多様化や課金・商品提供の拡大が期待されている。

アプリ外課金プラットフォーム「アプリペイ」を開発・運営するデジタルガレージの崎島氏は、アプリ外決済を導入するメリットについて「事業者にとっては手数料が軽減されるのが大きい。アプリ内課金では手数料が30%かかるところが、たとえばアプリペイを利用すれば5%ほどの手数料で済みます」と説明する。

モバイルゲーム市場でアプリ外決済への期待が高まる背景には、海外での市場拡大と国内市場の成長の鈍化がある。アメリカの調査会社Sensor Towerが発表した「2025年日本のゲーム市場インサイト」によると、日本のモバイルゲームダウンロード数は2020年のピーク以降、ほぼ横ばいの年間6億以上で成長は鈍化している。そんななかアプリ内での課金による収益は1.6兆円を常に超えており、この「課金」の収益をいかに取り込めるか、そして大きく成長を続ける海外市場にどう進出できるかが、事業者の収益拡大の鍵となりそうだ。

崎島氏は「モバイルゲーム市場は特に新興国の成長に支えられており、海外市場は重要な収益機会になる」と強調。アプリ外決済が海外ユーザーに対しても可能になれば、「収益の増加でコア事業への再投資が可能になり、パブリッシャー様が楽しいゲームをユーザーへ届けることにつながる」と説明する。

海外ユーザーへの「アプリ外決済」導入への3つの障壁

一方でグローバル展開を事業者が単独で実行するには、複雑な障壁が存在している。崎島氏によると、海外展開の際に事業者が直面する主な課題は以下の3点だ。

①各国・地域で乱立する多くの決済手段に対応すること

グローバルなキャッシュレス化が進展するなかで、各国・地域ごとに多くの決済手段が乱立している。これらの決済手段すべてと契約することは困難である上に、それぞれの決済手段で「不正やチャージバック(返金)への対応などを行うことは非常に大変」だと崎島氏は述べ、運用上のリスク対応の複雑さを強調する。

②現地の法制度や納税、カスタマーサービスへの対応

各国・地域で異なる法制度や税金への対応も大きな課題だ。たとえば日本国内だけを考えても特商法、資金決済法、消費者保護法など対応すべきさまざまな法律があるが、海外でもそれぞれで異なる法令を把握して遵守することが求められる。加えて消費税の徴収や納付、各地に適した形でのカスタマーサービスの運用など、複雑な対応が必要となる。

③Webストアの構築と新規ユーザーの獲得

法や税制度への対応という最低限の障壁をクリアできたとしても、海外ユーザーにアプリ外決済の存在を知ってもらい、利用してもらわなければ意味がない。アプリ外決済のための独自のWebストアを構築するだけでなく、それをどのように活用して新規ユーザーを獲得し、効果的に運用していけるかが重要な課題となる。

課題を解決するための3つのソリューション

これらの課題を解決するため、デジタルガレージはワンストップで事業者の海外展開を可能にするサービスを始動させた。事業者はデジタルガレージと契約するだけで、アプリペイを通じて海外でアプリ外決済のためのWebストアが展開できるようになる。デジタルコンテンツの国際流通に豊富な経験を持つシンガポールのCoda社と連携することで、世界70か国以上でのサービス展開が可能になるという。

崎島氏はCoda社のB2B領域におけるCCO・Zac Liew氏とともに、デジタルガレージとCoda社が上記の3つの課題に対し、以下の3つのソリューションを提供することを説明した。

①国・地域ごとに最適な決済手段に対応

事業者側は一本の利用契約のみで海外のあらゆる決済手段に対応できるようにする。両社の連携で、世界中の400以上の決済手段をカバーすることができるという。事業者は日本語で国内取引として対応することができ、不正対策やチャージバックもデジタルガレージ側で引き受ける。さらに、為替や海外送金に対応し、売上を日本円で入金させることも可能だ。

Liew氏はあらゆる決済手段に対応する重要性について、こう述べる。「先進国ではクレジットカード払いが主流ですが、アジアや南米では違います。たとえば私たちの主要市場の一つであるインドネシアでは、人口の10%未満しかカードを持っていません。ただそうした人々は、代わりにインドネシアの電子ウォレットなどの手段を使用して支払うことを好みます。こうした決済にも対応できるようにすることで、結果として対象となる市場を拡大することができます」

②「販売主体主」を引き受け、法令や納税に対応

デジタルガレージとCoda社が販売主体を代行する「販売主体主対応(Merchant of Record)」機能を通じて、事業者に代わって両社が法令や納税、契約上のリスクや責任を引き受ける。また、海外に複数の拠点を置くことで、時差にも対応し、現地に適したカスタマーサポートを展開するという。

Liew氏は「たとえばブラジルでは税法が非常に流動的で、絶えず変更されています。これを社内で処理する能力を持つことは困難ですが、私たちはこれらを法務および税務の観点から管理する専門家を擁しています」と話し、「管轄区域を横断するコンプライアンスの重要性は信じられないほど重要」だと強調した。

③「コンテンツの現地化」による集客機能の強化

両社はシステムの構築にとどまらず、ユーザーの「認知」から「課金」というコンバージョンまで、マーケティング機能を事業者と一緒に設計して実施していく。具体的な施策としては、ストアの構築から、イベントと連動したクリエイティブの作成、おすすめコンテンツの提示といった運用が含まれる。崎島氏は「モバイルキャリア、インフルエンサー、そして市場によってはオフライン機能といった、さまざまなチャネルを通じて『コンテンツの現地化』をしていくことが重要」だと語った。

集客戦略についてLiew氏は「私たちは海外展開で15年以上の実績があり、同じやり方で全世界で展開していくのは難しいと理解しています。だからこそ、パートナーと非常に密接に連携し、顧客に対して地域に根ざした方法でアプローチし、市場でのユーザーと平均注文額を成長させるために、緻密にカスタマイズされたデータに基づくマーケティングキャンペーンを調整して行っている」と説明した。

海外での「アプリ外決済」成功の秘訣は

今後さらなる海外展開が期待される「アプリ外決済」。その成功の秘訣について、崎島氏はこう語る。

「まずはアプリ外課金ができるWebストアを始めるとき、『公式のサービス』だということを認知いただくことが非常に重要です。従来はアプリ内のみだった顧客との接点を、公式のWebストアやSNSなど複数の接点に広げていくことが必要ですし、パブリッシャーさんによってはオンライン・オフラインを含めた施策なども実施することで、ユーザーさんとの新しい関係を構築している例もあります。また、Webストアにそこでしか買えないものや特別な商品のラインナップがあるなど、品揃えの特徴を出していくことも今後重要になってくると思います」

Liew氏は「成功の秘訣はマーケットによって異なるため、多少慎重になる必要があります」と前置きした上で、自社の経験も踏まえながら成功の要素を2つ挙げた。

「一般的に、ユーザーをアプリ外に誘導する方法について考える際、第一に重要なのはユーザーエクスペリエンス(UI/UX)に関することです。地域によっては『リンクアウト』と呼ぶ機能を利用できますが、これはアプリ内にリンクがあり、ユーザーがシームレスにアプリ外に移動できる機能で、非常にスムーズなプロセスのように感じられます。この機能が利用できない他の市場では、処理のために可能な限りスムーズな体験を提供できるように、摩擦(手間)を減らすことが重要です。

2番目は、私たちが『ライブ・オペレーション』と呼ぶマーケティングに関するものです。たとえば私たちが協力している『Call of Duty®: Mobile』などでは、ユーザーをアプリ外に誘導するために特別プロモーションを実施しており、これが高いコンバージョンにつながります。特別なスキルやロイヤルティプログラムなどの特別プロモーションを実施することで、最終的にこれらのゲーマーとアプリ外のトラフィックを通じてエンゲージメントを高めることができます」

崎島氏は「グローバル展開の課題は多く、自社だけで進めるのはハードルが高い」と総括した上で、両社が「グローバル対応、販売主体、集客効果の3つの柱でソリューションを提供することで、容易な導入方法で、安心・安全な形で海外進出のお役に立てれば」と、日本のコンテンツのさらなる海外展開に期待を込めた。

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アプリペイ
「アプリペイ」は、「決済システム」「WEBページ(CMS生成)」「カスタマーサポート」「マーケティング」の機能を提供する、多数のアプリのデジタルコンテンツをアプリ外で購入可能な国内No.1アプリ外課金プラットフォームです。

アプリ事業者は、本サービスによって、Webページ制作やシステム開発の手間とコストをかけることなく、アプリ外課金決済の仕組みを簡単に構築でき、決済手数料の負担を大幅に軽減することができます。

また、ユーザーは、「アプリペイ」に登録するだけで、クレジットカードをはじめとした複数の決済手段を利用することができ、さまざまなアプリの課金決済を簡単に行えるようになります。

2025年9月にはグローバル対応を開始し、Merchant of Record(MoR)機能の提供を基本に、多言語・多文化に対応したサイト構築やユーザーサポート、マーケティング・データ分析などの海外展開に関する煩雑な業務をサポートしています。

「アプリペイ」の決済システムは、グループ会社である株式会社DGフィナンシャルテクノロジーが提供する決済サービスを採用しています。決済取扱高7.5兆円を超える堅牢かつ安定した高速インフラにより「DG FinTech Shift」を後押しすると同時に、スマートフォン業界のイノベーションを加速させます。
https://service.app-pay.jp/

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