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飲食店のテイクアウトに、自社チャネルという選択肢を。飲食店を支えるデジタル戦略

コロナ禍をきっかけに、飲食業界ではデジタル化が急速に広がった。こうした変化の中で、新たな顧客の開拓につながるオンライン注文の仕組みが、改めて注目されている。
デジタルガレージが提供する「Pangaea Order(パンゲアオーダー)」は、飲食店が自社ブランドのテイクアウト注文サイトを構築し、注文から決済までを自社のチャネルで完結できるようにするサービスだ。

飲食店の現場が抱える課題に、Pangaea Orderはどう応えようとしているのか。事業を統括する前川公佑氏と、プロダクトマネジメントを担う小野郁人氏に話を聞いた。


<Speakers>
株式会社デジタルガレージ ビジネスデベロップメント本部 リテールテック事業部 部長
前川 公佑
2016年4月にデジタルガレージに入社。オープンイノベーション型組織にて協賛企業に対する企画営業やプロジェクト推進を経て、Pangaea Deliveryのプロダクトマネジメントおよび事業開発を担当し、現職。


株式会社デジタルガレージ ビジネスデベロップメント本部 リテールテック事業部 プロダクトマネージャー
小野 郁人
システムエンジニア、HR領域のSaaSプロダクト企画を経て、2024年9月デジタルガレージ入社。Pangaea Orderのプロダクトマネジメントを担当。

(所属・肩書は公開時点)


デリバリーの普及が生んだ、飲食店の新たな課題

飲食業界は、もともとデジタル化が進みにくい領域とされてきた。日々の店舗運営に人手が割かれ、IT投資にまで手が回らないケースは多い。外食業態のテイクアウト市場は2024年度に2兆1,075億円に達し、コロナ前比で24%増と拡大を続けている。だが、その恩恵を十分に受けられているのは一部の企業に限られる。

自社で専用のシステムを開発し運用できるエンタープライズ企業と、社内のデジタル人材が限定的な飲食店とでは、デジタル化から得られる恩恵に大きな差が開いている。Pangaeaシリーズの立ち上げに携わった前川氏は、事業の原点となった場面をこう振り返る。

「メンバーがたまたま入った飲食店で、デリバリー用のタブレットが10台ぐらい並んでいるのを見ました。お店の方に聞くと、すべて違うサービスの端末だとのこと。この煩雑さを解決したいと思い、Pangaeaシリーズの構想が始まりました」

デジタルガレージグループは、長年携わってきた決済代行事業にて、多様な決済手段を一つに統合して加盟店に提供してきた。こうした事業モデルを土台に最初に立ち上げたのが、複数のデリバリーサービスからの注文を一台のタブレットで一元管理できる「Pangaea Delivery」だったのだ。

決済の世界で培った「バラバラなものを一つにまとめる」という発想を、注文の領域にもち込んだ。

飲食店の利益を守る、低コストな自社注文チャネルの実現

Pangaea Deliveryに続いてシリーズに加わったのが「Pangaea Order」だ。飲食店が自社ブランドのテイクアウト専用サイトを構築できるサービスである。消費者はスマートフォンでメニューを閲覧し、受取日時を指定して注文と事前決済を完了させる。店舗側はタブレット一台で、注文の受付から調理、受け渡しまでのステータスを一元管理できる。

このサービスの最大の特徴は、デジタルガレージグループの決済プラットフォームと直結している点にある。

モバイルオーダーサービスの多くは、注文の仕組みを提供する会社と、決済の処理を担う会社が別々に存在する仕組みで成り立っている。そのため、飲食店が支払う手数料には、注文サービス側と決済会社側、双方の取り分が含まれるのが一般的だ。Pangaea Orderは、注文機能と決済機能を一体で提供しており、飲食店はPangaea Orderを導入するだけで、モバイルオーダーと決済をまとめて利用できる。複数の事業者と個別に契約する必要がなく、導入や運用の負担を抑えられるほか、注文サービスと決済サービスにそれぞれ発生していたコストの削減にもつながる。

小野氏は、低い手数料率でサービスを提供できることが、飲食店の収益を守るうえで欠かせないと語る。
「飲食店さまの場合、注文一件あたりの単価がそこまで高くないうえに、利益率も決して余裕のあるものではありません。とくに中小規模の場合、手数料率の差がそのまま月々の利益に響きます。そこを低く抑えてご提供できるのは、我々ならではの強みだと思っています」

競合各社では決済手数料や入金サイクルが一律で設定されているところ、Pangaea Orderでは加盟店ごとの売上状況やニーズに応じて最適なプランを柔軟に設定可能となる。例えば、導入初期はテイクアウトの売上が見込めないためリスクを抑えたプランを選んだり、逆に売上が多く見込まれる場合には、グループ間で手数料率を調整することでトータルのランニングコストを抑えるといった提案が可能だ。

自社チャネルをもつ価値は、コスト面にとどまらない。Pangaea Orderでは顧客との接点や注文のデータが店舗側に蓄積されていく。誰が・いつ・何を注文したかを店舗自身が把握できることは、リピーターの育成やメニュー開発など、その後の打ち手の土台になる。

テイクアウトの注文単価が2倍に。座席数に縛られない売上のつくり方

小野氏によれば、Pangaea Orderを導入した飲食店では、テイクアウトの注文単価が店頭や電話での注文と比べておよそ2倍になるケースもあるという。

「対面や電話での注文だと口頭でのやりとりに時間がかかり、早くしなければと気をつかうお客さまも多いです。オンラインであれば急ぐ必要はなく、メニューの写真を見ながらサイドメニューやトッピングをじっくり検討できます。週末にご家族でまとめて注文されるケースも多いです。
また、事前にクレジットカードやコード決済でお支払いが完了するので、電話注文で時折発生する『注文を受けたが受け取りに来ない』という問題も起こりません」

さらに、オンラインでの売上の構造的な強みを、前川氏は次のように整理する。

「飲食店の店内売上は、座席数×客単価×回転率で決まります。店舗のキャパシティによってどうしても天井が出てきます。一方で、オンラインの売上は客単価×注文件数なので、そうした物理的な制約がありません。間口を広げれば、その分だけ売上拡大の余地があります」

売上を伸ばす一方で、現場のオペレーションを崩さない工夫も施されている。
小野氏は「たとえば時間帯ごと、かつ商品ごとに注文数を制限できる機能を提供している。店舗の業務を壊したいわけではなく、そのキャパシティの範囲内で売上を上げていただくための仕掛けだ」と語る。この機能により、店舗の処理能力を超えた注文を防ぎ、無理のない運用が可能になる。
既存の店舗システムとの連携も、現場の負担軽減を支えている。Pangaea OrderはPOSシステム大手の東芝テックと連携しており、オンラインで入った注文のデータがそのままPOSに反映される。店舗のスタッフが注文内容をPOSに手入力し直す手間は発生しない。
キッチンプリンターとも連動しており、ドリンクと料理で出力先を分けるといった既存の調理フローのなかにオンライン注文を組み込める。

Pangaeaシリーズ累計で8,500を超える店舗に導入が広がるなかで、Pangaea Orderが重視しているのは導入の件数よりも、導入した店舗の売上をいかに伸ばすかだ。

小野氏は、飲食店事業者がリスクを抑えながら成果を確かめられることが大切だと語る。

「『テイクアウトを始めるのはいいけど、売上は上がるの?』と不安を抱えていらっしゃる飲食店事業者さまが多いです。実際、全店で一斉に導入するケースはまれで、まず1店舗から試されます。我々としては成果を実感していただくことはもちろんですが、ツールの提供にとどまらず、売上拡大のシナリオを一緒に描くことが重要だと考えています。
たとえば、Googleマップでの店舗の露出を高めるMEOの施策を提案することが多いです。飲食店を探す消費者の方はGoogleマップを使われるので、そこからテイクアウトの注文サイトへ導線をつくることが、注文件数を伸ばすうえで効果的だからです。
他にも、近隣エリアへのポスティング用チラシの作成をお手伝いしたり、他社さまの成功事例をもとに『ご飯の大盛りオプションを追加してはどうですか』とメニュー構成の見直しをご提案したりすることもあります」

こうした集客や売上改善の支援には、グループ内でデジタルマーケティングやEC事業の知見をもつDGビジネステクノロジー(以下、DGBT)のノウハウが活かされている。グループ全体での支援こそがPangaeaシリーズの本質だと、小野氏は強調する。

「我々が意識しているのは、デジタルガレージグループが一体となってお客さまをご支援することです。決済もマーケティングもデータの活用も、グループの力を組み合わせてご提案できるのが、デジタルガレージがこの事業に取り組む意義だと考えています」

テイクアウトから広がる、飲食店の新しい売上のかたち

Pangaea Orderの展開は、国内の消費者向けテイクアウトにとどまらない。新たな顧客層の開拓や他サービスとの連携を通じて、飲食店の売上支援をさらに広げていく考えだ。

日本を訪れる外国人観光客のなかには、飲食店でテイクアウトした食事をホテルの部屋で楽しんだり、和菓子のような軽食を移動中に食べたりする人も多い。Googleマップを起点としたマーケティングの支援と、海外で広く使われている決済手段への対応を組み合わせれば、訪日客の注文を取り込む新たな販路が開ける。

またDGビジネステクノロジーが提供する業界特化型データ収集基盤『InsiteStream』と連携し、散らばるデータセットを統合して新規出店や経営の高度な支援へとつなげていく構想もある。

こうした事業の拡大を見据え、前川氏は、デジタルガレージグループとして今後取り組んでいく方向性をこう語る。

「直近ではPangaeaシリーズの導入事業者を増やし、業界トップシェアの実現を目指しています。そのために、社外パートナーとの連携に加え、新機能の実装も進めていく予定です。たとえば、電話での注文にAIがリアルタイムで応答し、無人で対応を完結できるような自動受付機能の実装も構想しています。
さらに、『食べログ』『DGFT請求書カード払い』との連携など、グループ内の他のサービスとも組み合わせ、注文以外の課題にも踏み込んでいきたいと考えています。注文、決済、集客、資金繰りまで、飲食店の経営課題をトータルで支援することが目標です。」

飲食店が店舗の外に新たな売上の柱を築き、その成果を持続的に拡大していける仕組みをつくる。Pangaea Orderが取り組むのは単なるツールの提供にとどまらず、飲食店のデジタル化を起点とした、日本の豊かな外食産業を支えるインフラづくりだ。

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