CEO Comments CEOコメント

林 郁

代表取締役 兼
社長執行役員グループCEO

CEO Comment Vol.77 『2023.3月期第2四半期決算サマリー[IFRS](連結)』

投資を除く事業群は33.4%の増益(4〜9月)と、決済事業を中心に順調に進捗
<10月に発生した修正後発事象に起因する評価損の影響で、税引前四半期損失>

〜りそなホールディングスとの資本業務提携及び総額50億円の自己株式取得を決定〜

本日の取締役会の承認を受けて、2023年3月期第2四半期決算短信[IFRS]を発表いたしました。

Ⅰ. 2023.3月期 第2四半期決算サマリーとコーポレートアクション

 第2四半期連結累計期間(以下、2Q累計)は、収益14,564百万円(前年同期比63.7%減)、税引前四半期損失6,642百万円(前年同期は27,425百万円の利益)となりました。

 フィナンシャルテクノロジー(以下、FT)事業の決済取扱高が引き続き好調に拡大したほか、マーケティングテクノロジー(以下、MT)事業は、主力のデジタルアド事業が、クレジットカードをはじめとした金融関連の取扱いを中心に堅調に推移しました。また、ロングタームインキュベーション(以下、LTI)事業では、カカクコムの業績が回復基調となりました。一方で、前年同期に大きく増加した、投資先であるBlockstream Corporation Inc.(以下、Blockstream社)の公正価値評価の減少により、当社グループ全体で、前年同期比で大幅のマイナスのインパクトを受けました。結果、インキュベーションテクノロジー(以下、IT)事業および事業セグメントに属していない全社部門で税引前四半期損失を計上しました。

 Blocskstream社の公正価値評価について、補足させていただきます。同社には、業務提携を前提に、2016年のアーリーステージで資本参加しました。その後、昨年の同社の資金調達時の評価を反映し、大きな評価益(IFRS)を計上しました。他方、今期の2Qについては、同社の10月の資金調達時の評価により、大きな評価損(IFRS)を計上することになりました。公正価値評価をタイムリーに反映するという、日本基準にはないIFRS上のルールに基づいた処理であり、いずれもキャッシュ・イン、キャッシュ・アウトを伴わない損益となります。

 投資先1社の価値評価変動に、業績が大きな影響を受ける結果となりましたが、評価損益(IFRS)はキャッシュ・フローに影響を与えるものではなく、IT事業や全社部門の投資に係る損益を除いた税引前四半期利益は33.4%の増益であり、FT事業、LTI事業を中心に、順調に進捗しております。

 あわせて、総額50億円(上限)の自己株式を取得することを決定いたしました。これまでも、株主の皆様に対する利益還元を重要な経営課題として位置づけてまいりましたが、今後も、財務状況や株価状況等に鑑みながら、キャッシュ・フローを意識した経営による株主還元を基本方針として取り組んでいきたいと考えております。

 詳細は、以下のスライドをご覧ください。

 以下、セグメントレビューとなります。

<FT>フィナンシャルテクノロジー事業

 FT事業の2Q累計収益は、5,618百万円(前年同期比8.2%増)、税引前四半期利益2,430百万円(同9.1%増)となりました。
 決済取扱高は、2兆4,792億円(前年同期比20%増)、決済取扱件数は、4億6,319万件(同22%増)と、20%を超える高成長を実現しております。非対面決済取扱高は、1兆8,767億円(同14%増)、注力中の対面決済取扱高は、6,025億円(同44%増)となりました。業種別では、主力の旅行系や娯楽施設の回復に加え、アライアンス戦略が奏功している総合小売の領域が伸長しました。

<MT>マーケティングテクノロジー事業

 MT事業の2Q累計収益は、5,775百万円(前年同期比8.5%減)、税引前利益は、372百万円(同13.5%減)となりました。第2四半期単体の税引前四半期利益は、272百万円(同49%増)と、下期に向けて回復基調です。
 主力のデジタルアド取扱高は、155億円(同2%減)、その中でも当社主力のクレジットカード等金融関連の取扱高は、94億円(同2%増)と、堅調に推移しました。

<IT>インキュベーションテクノロジー事業

 IT事業の2Q累計収益は、▲11百万円(前年同期比16,240百万円減)、税引前四半期損失は、963百万円(前年同期は15,522百万円の利益)となりました。
 前述のBlockstream社の影響もあり、投資先の公正価値評価残高は前四半期末比で減少しましたが、引き続き800億円程度と安定しております。以下の、「ITセグメント-セグメント業績(2022年9月末)」をご覧ください。また、2枚目のスライド「ITセグメントポートフォリオ概況」で、ポートフォリオ全体に占める上位6社の公正価値比率を示しております。2Qにおいて、Blockstream社の評価損を計上も、前期末比では公正価値が増加しております。

<LTI>ロングタームインキュベーション事業

 LTI事業の2Q累計収益は、2,426百万円(前期比19.7%増)、税引前四半期利益は、1,293百万円(同19.9%増)となりました。
 持分法適用会社であるカカクコムが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から経済社会活動の正常化が進む中で、回復基調となり、特に食べログ事業の回復や求人ボックス事業が好調に推移しております。

Ⅱ. グループ戦略【DG FinTech Shift】の進捗

〜りそなグループとの戦略提携と新サービスの立ち上げ〜

 2021年2月にPSP事業会社のイーコンテクストとベリトランスを統合し、新たにDGフィナンシャルテクノロジー(DGFT)と商号変更して、グループ成長の加速のコアとして、システム基盤の効率化を進めてきました。東芝テックと資本業務提携/リテール市場のキャッシュレス推進とDX化を共同推進、JCBと資本業務提携/両社の保有するデータや次世代フィンテック周辺のテクノロジーを融合など、さまざまな戦略パートナーと共にグループ戦略【DG FinTech Shift】の取り組みを加速してきました。

 一方で、Crypto Garageの暗号資産交換業者登録の完了ならびに野村ホールディングスとの資本業務提携/暗号資産ビジネスプラットフォームの共同開発など【Ⅱ】【次世代テクノロジーの社会実装 / ブロックチェーン技術等による非連続な事業創出】を次世代事業として並行して準備してきました。【Ⅰ】【決済プラットフォームを軸とした事業展開】とあわせ、【Ⅰ】と【Ⅱ】の両ウィングで、グループ戦略【DG FinTech Shift】を推進しています。

 詳細は、以下のスライドをご覧ください。

 以下スライドにて、PSP事業会社2社統合の戦略基盤となるFTセグメントの概況をご覧ください。

 最新の発表から遡って、グループ戦略【DG FinTech Shift】の施策に関してご説明差し上げます。

(1)りそなHDとの資本業務提携
 本日「りそなHDと資本業務提携」を発表しました。りそなグループの貸出金は、約83%が個人・中小企業のお客さま、いわゆるリテールのお客さま向けとなっています。SMB(中小規模事業者)向け顧客基盤が強固な、りそなHDとの資本業務提携によって、両社の保有するデータや次世代フィンテック周辺のテクノロジーなどのアセットを融合し、マーケティング/DX事業「DGFTのECを始めとした非対面領域における決済ソリューション」を共同営業体制で提供します。また、革新技術やデータを活用した付加価値の高いレンディングサービスを提供し、新たなフィンテック事業領域の創造を目指します。詳細は別途各事業のリリースに合わせて開示していく予定です。

(2)B2B決済サービスをJCBと開始 / DGFT請求書カード払い
 DGグループは、過去B2C市場の決済事業を20数年に渡り、実施してきました。その結果、約50種類の決済手段を提供し、非対面・対面領域88万拠点でのお支払いが可能で、年間決済取扱高は4.4兆円を超える事業に成長してきました。今回参入するB2B市場はB2Cの3倍以上の1,000兆円の市場規模を有する巨大市場です。あわせて2023年10月に始まる適格請求書等保存方式(インボイス制度)の導入も、この領域を後押しすると認識しています。

 さまざまな角度のDXの進化・発展により、欧米では、今までは実現できなかったサービスが、大型フィンテックベンチャーにより新たなマーケットを開拓し始めています。また、請求書のカード払いは世界で成長市場になってきています。2018年創業の米メリオは直近の資金調達時に企業価値40億ドル(約6000億円)に達したほか、米国・カナダを拠点にするプラスティークは2022年8月に特別買収目的会社(SPAC)を使った上場計画を発表し、当社は、シンガポールのアジア初の法人向けワンストップ費用支払い管理サービスを提供するiPaymyには初期から投資をしています。

 今回のJCBとの取り組みは、クレジットカードのプラットフォームとDGグループの決済・データノウハウを融合させた日本型B2B決済サービスで、サービス名は「DGFT請求書カード払い」となります。個人・中小企業のお客さま向けに資金繰りと業務効率化を支援し、日本の事業者のマーケット構造や個人のニーズに対応し、日本型のB2Bのサービスのデファクトを目指します。まずは、B2B決済サービスをJCBブランドにて立ち上げ、今後Visa/Master含むオールブランドへ展開していきます。

 詳細は、以下のスライドをご覧ください。

(3)東芝テックとカカクコムと3社合意 / 食べログオーダー
 7月よりDGグループは東芝テックやグループ会社のカカクコムと食べログオーダーを戦略的に支援する基本合意書を締結し、飲食・小売業界のDX推進を始めています。具体的には、東芝テックが有するPOSシステムと、DGの決済サービスを融合し、食べログ加盟店を利用する消費者の方々が自分のスマートフォンをゲートウェイにし、さまざまなサービスを受けられるという取り組みです。経済産業省が推進する「IT導入補助金2022」は、まさに外食事業者の置かれている状況を解決するための行政施策であり、今回の3社合意は、民間サイドから飲食業界に対して日本を代表する最適なソリューションの提供を目指す取り組みです。

 以下3社の取り組みのスライドをご覧ください。

※2023.3月期第1四半期決算説明資料より抜粋

 日本でもデジタル庁の誕生により、先行する先進国並みのDX化が始まる前夜です。過去20年に渡り、決済(FT)、マーケティング(MT)、またグローバルネットワークを活用した様々な投資(IT)を有機的に連携し、それぞれのレイヤーのステークホルダーの方々とも連携して、DG FinTech Shift戦略を進めていきます。また、次世代テクノロジーのR&D活動も合わせ、一歩先の未来も見つめていきたいと思います。

Ⅲ. 次世代テクノロジーの社会実装

 DGグループは、Webの誕生からWeb1.0、Web2.0の時代と、インターネットの発展に伴走してきました。日本で最初の個人ホームページの開設などデジタル技術の進化に併せて、さまざまなサービスを展開してきました。そして、いよいよweb3の時代が始まろうとしています。日本は国家戦略にweb3を据えて、他先進国をリードしようとしています。グローバルシチズンシップとして、またグローバルインターネットコミュニティの一メンバーとして、当社取締役 共同創業者 兼 専務執行役員Chief Architectの伊藤穰一を軸に次世代を拓くアーキテクチャのLabで次世代テクノロジーを社会実装し、グローバルコミュニティに貢献していこうと思います。

(1)新時代を拓く次世代アーキテクチャのLabを開設 / Digital Architecture Lab https://dalab.xyz/
 伊藤穰一を中核に、「デジタル庁Web3.0研究会座長」の國領 二郎氏(慶應義塾大学教授)、「日本のインターネットの父」と言われる村井 純氏(慶應義塾大学教授)、スプツニ子!氏(アーティスト / 東京藝術大学デザイン科准教授)など、今後のDigital Architectureを設計するのに相応しいメンバーにアドバイザーとして就任いただき、Digital Architecture Labを設立しました。次世代AIやweb3などテクノロジーの進化がもたらす次世代の社会構造を設計し、実装を推進するために3つのテーマを設定しました。

 詳細は、以下のスライドをご覧ください。

 米国の著名な法学者で当社のカンファレンスにも登壇いただいたLawrence Lessig氏は、「文化の理解、法律の理解、経済の理解、技術の理解」の4つを総合的に理解することが、ひいては正しいコンテクストを導き、新しいテクノロジーの時代を築き上げると提唱しています。web3には、光と影の部分が共存しています。様々な問題を文化、法律、経済、技術の側面で日本的な解釈で次世代アーキテクチャをデザインし、世界に提示し、本Labより次世代のグローバルインターネットコミュニティを牽引するDigital Architectureが生まれてくると確信しています。

 Digital Architecture Labのコンセプト動画をご覧ください。

(2)THE NEW CONTEXT CONFERENCE の開催 / テーマはDesigning Our New Digital Architecture
 6月に続いて本年度2回目の「THE NEW CONTEXT CONFERENCE」を開催しました。2005年から23回目の開催となる今回は「Designing Our New Digital Architecture」をテーマに、サイバー法の権威でクリエイティブ・コモンズの創設者であるLawrence Lessig氏や、NFTアーティストとして第一線で活躍しているPplpleasr氏など、次世代のテクノロジーに関する様々な業界の有識者を招聘し、未来の社会の形について議論しました。

 本イベントのダイジェスト動画アーカイブ映像をご覧ください。

(3)onlab web3 の始動
 日本のスタートアップ向けアクセラレーター「Born in Japan〜事業を磨き世界へ〜」と海外スタートアップのJapan Entry「Unlock Japan〜海外から日本へ〜」の両輪をコンセプトに、グローバルを代表するweb3のエキスパートによるメンタリングやコミュニティを通じて、国内外のスタートアップ・プロジェクトの挑戦を支援するonlab web3を始動しました。11月には多数の応募者の中から選定した国内外のスタートアップ8社によるグローバルピッチイベントも開催し、今後もDGのグローバルネットワークを駆使したさまざまなサポートも準備していきます。

 Open Network Labおよびonlab web3の紹介動画をご覧ください。

Ⅳ.グループを挙げてのESGの取り組み

〜スタートアップの社会実装活動に向けたESGプログラムの実施〜
 昨今、国内においてもESGへの取り組みに対する機運が高まっております。しかしながら、ベンチャーキャピタルやアクセラレータプログラムによる投資先のスタートアップに対する教育機会や人財そのものが不足しています。

 Open Network Labの13年の歴史だけでも140社を超え、国内外で活躍し、公開企業も多数輩出するようになってきました。長年スタートアップの成長を支援してきたDGグループは、いち早く海外とのネットワークを活用して、先進的なESG事例の紹介やワークショップの開催など、スタートアップのESG経営とサスティナブルな事業成長を支援しています。また、2019年には、グローバルで活動するESG専任の執行役員を設置し、グローバル規模でESG経営の強化プログラムを実施しています。今後も、DGはポートフォリオを含めた大きな規模で持続可能な社会の構築へ貢献していきます。

 詳細は、以下のスライドをご覧ください。

 ESGの活動は、「Earthshot」というコンセプトに基づき、来年より「グローバルな宇宙関連プロジェクト」や、web3の技術を活用した「グローバルなカーボンオフセットプロジェクト」等の主体的な参加を検討しています。

 「Earthshot」の趣旨に賛同いただいた世界的なアーティスト坂本龍一さんの協力も得て制作した「Earthshot」のコンセプト動画をご覧ください。(本動画は、12月に全世界に向けて配信する坂本龍一さんのコンサートで上映する予定です。「Earthshot」について坂本龍一さんからいただいたメッセージを、当社へのオリジナル書下ろし曲「DG25」に乗せてご紹介したものです。)

 最後になりますが、DGは、両利きの経営/Ambidexterityをコンセプトに、「守り、既存事業の深堀」という右腕と、「攻め、新規事業の創造」という左腕で、「持続可能な社会に向けた『新しいコンテクスト』をデザインし、テクノロジーで社会実装する」という企業パーパスのもと、新しいDXコンテクストをテクノロジーで社会実装し、次世代に貢献していく所存です。

 株主を含むステークホルダーの皆様におかれましては、より一層のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。


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